大腸菌染色体分配に関わる未知の因子を同定することを目的として研究を行ない、mukB106変異を多量コピーで抑制する遺伝子(cspC及びcspE)を単離し以下のことを明らかにした。 1.mukB106及びmukB33の変異部位を同定した。mukB106はSer-33がPheに、mukB33ではAsp-1201がAsnに変化していた。cspC及びcspEは、どちらの点突然変異をも抑制することができた。しかしmukB欠損変異を抑制することができなかった。 2.アミノ酸配列をもとにホモロジー検索を行った結果、大腸菌には5種のホモログ(CspA、CspB、CspC、CspD及びCspE)が存在することが明らかになった。しかしcspA、cspB及びcspDは多重コピーでもmukB点突然変異を抑制する活性は示さなかった。またcspA及びcspBは低温ショックにより転写誘導されるが、他の3つの遺伝子においては転写誘導は観察されなかった。これらのことは一次構造は似ていても、それぞれの蛋白質は機能的分化をしていることを示唆している。真核生物にもこれらとホモロジーを有する蛋白質が存在することから進化的にも興味のある点である。 3.CspC及びCspE蛋白質を精製した。まずそれぞれMalE融合型蛋白質として精製し、その後特異的ペプチダーゼによりMalE部分を切断しゲルろ過により目的の精製蛋白質を得た。これらは共にSDS-PAGE上近接した2本のバンドとして観察される。このことは、これらの蛋白質が何らかの修飾を受けていることを示唆している。現在、精製蛋白質を用いて、DNA結合能及びMukB蛋白質との相互作用を検討している。 本年度の研究計画は概ね達成されたと考えている。
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