マウス精巣より調製したcDNAライブラリーを用いて、分裂酵母の減数分裂不能な突然変異を相補するマウス遺伝子を検索した。分裂酵母mei2は、減数分裂前DNA合成および減数第一分裂に必須なRNA結合タンパク質をコードし、sme2遺伝子はmei2遺伝子産物と結合するRNA分子(meiRNA)をコードしている。mei2あるいはsme2遺伝子の突然変異を相補するマウス遺伝子12種を単離した。その中には、RNA結合タンパク質をコードしていると考えられる遺伝子が3つあり、2つは既存のものであったが、他のひとつは302アミノ酸からなる新規のRNA結合タンパク質をコードしていた。この遺伝子の発現を調べると、複数の長さの転写産物のうち、1.2kbのmRNAが精巣特異的に転写されていた。mei2をアレル特異的に相補するクローン♯ME5はDnaJファミリーに属するタンパク質をコードし、精巣で特に強い発現を示した。また、アポトーシスに関与するシステインプロテアーゼをコードするマウスNedd2遺伝子が、減数分裂前DNA合成に欠損をもつmei2-197E変異と、減数第一分裂に欠損をもつmei2-33変異の両方を相補することがわかった。 一方、分裂酵母mes1は減数第二分裂に必須な遺伝子であるが、その遺伝子産物の生化学的な活性は明らかでない。mes1遺伝子の突然変異を相補するマウス遺伝子として、癌原遺伝子のc-cblとαチューブリン遺伝子が得られた。c-cblは、その機能は明らかにされていないが、細胞骨格系との相互作用が示唆されている。また、mes1をマルチコピーで抑圧する分裂酵母遺伝子を単離したところ、微小管の構造調節に関与すると考えられているタンパク質と相同生をもつ遺伝子が得られた。これらのことから、mes1遺伝子産物は減数第二分裂期において微小管の構造調節に関与している可能性が示唆された。
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