研究概要 |
1.C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子3'末端の2次構造解析。患者血清よりクローニングしたHCVの3'末端RNA(約250b)に対し、塩基配列あるいは、構造特異的なRNA分解酵素(RNaseT1,RNaseV1等)を用いて2次構造をマッピングした。同領域はステム及びループよりなる特徴的な2次構造とポリU鎖が存在していた。 2.HCV遺伝子がコードするヘリカーゼ様蛋白質NS3のRNA結合活性の解析。NS3蛋白質を大腸菌内で産生させ、部分精製した。この分画をポリUセファロースと混合し、適当な塩濃度の緩衝液中にて洗浄する事で、NS3蛋白質のRNA結合能を検出する系を確立した。また同蛋白質分画をNS3蛋白質に対して過剰のポリA,U,C及びG鎖と前処理することで結合の特異性を検討した。その結果ポリU鎖で特に結合が阻害された。さらに、NS3蛋白質の欠失変異体を作成し、RNA鎖との結合に必要な領域を検討した。高率のよい結合にはRNAヘリカーゼドメイン全体が必要であった。これらは、NS3蛋白質がポリU鎖結合能を有し、HCV遺伝子の3'末端に結合することを示唆している。 3.動物培養細胞株でのHCV遺伝子複製関連蛋白質発現系の確立。HCV遺伝子がコードするNS5b蛋白質中には、RNA依存性RNA合成酵素に特徴的なモチーフが存在している。NS5b遺伝子を組込んだワクシニアウイルスを構築し、動物培養細胞での効率のよい発現系を確立した。NS5bに対する特異的な抗体で細胞を染色することにより、本蛋白質は細胞質全体に存在することが明らかとなった。このことは、HCV RNAの複製が核ではなく細胞質内で行われることを示唆している。 4.以上、ウイルス遺伝子複製関連蛋白質の大腸菌及び動物細胞内での発現系を構築することが出来た。現在精製蛋白質を用いた試験管内複製系の確立を試みている。
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