微絨毛において、アクチン繊維と細胞膜の結合にERM蛋白質は重要な役割を果たしていると考えられる。ERM蛋白質が直接結合する膜蛋白質を同定することにより、細胞膜のアクチン繊維との結合部位の分子構築が明らかになっていくと考え、本年度は、結合の候補である膜蛋白質CD43とCD44について試験管内での結合実験を行った。バキュロウィルスを利用して、昆虫細胞にERM蛋白質を産出させ、ERM蛋白質を精製した。 一方、CD43とCD44に関しては、その細胞質領域がERMと結合すると想像されるので、それぞれの細胞質領域をグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質として大腸菌に発現させた。細胞質領域全長との融合蛋白質をはじめ、膜蛋白質側に欠損を生じさせた融合蛋白質も数種類得た。グルタチオン結合ビーズにより、それぞれの融合蛋白質を精製し、ERM蛋白質と混合し、両者の結合を生化学的に検討した。 1、CD43は、生理的塩濃度下において、その細胞質領域でERMと直接結合する。CD43の、ERMとの結合に必要な領域の少なくとも一つは、細胞質領域の中央より、やや細胞膜側にかたよったところにある。これは、CD43欠損蛋白質の哺乳類培養細胞への発現実験において示唆された、微絨毛への局在に必要な領域とおおまかに重なる。 2、CD44は、低塩濃度下では、特異的にモエシンと結合した。結合に必要な領域は、細胞膜直下の約30アミノ酸残基のなかに存在すると結論された。CD44については、哺乳類培養細胞への発現実験もあわせて行った。CD44の細胞質領域のなかで、微絨毛への局在に必要な領域は、先にで示した細胞膜直下の領域に重なることが明らかになった。
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