研究概要 |
大脳皮質の介在神経細胞の多くはγ-アミノ酪酸(GABA)を伝達物質とする抑制性の神経細胞である。また、GABA細胞はバルブアルブミンとカルビンジン、カルレチニン等のカルシウム結合蛋白質によってサブタイプに分けられる。そこで、GABA細胞の皮質内での構造を詳しく知るために、この3種のカルシウム結合タンパク質の免疫組織化学を光顕および電顕レベルで行った。成熟期のサル大脳皮質前頭前野では、観察されたすべての陽性終末は対称性のシナプスを形成していた。各サブタイプは細胞体や終末の層内分布が異なっており、特に、カルレチニン細胞は白質にも多く観察された。II層には、カルビンジン陽性の太い垂直方向の線維が存在し、その微細構造を観察すると、多くの陽性・陰性線維の束であった。また、シャンデリア細胞の終末様構造を始めとする、錐体細胞の細胞体やその近辺の樹状突起、軸索初節への入力は主にパルブアルブミン終末であり、カルビンジンやカルレチニン終末は錐体細胞の樹状突起遠位部に入力を持つと推定される等、錐体細胞への入力様式が異なっていた。その発達過程を観察すると、新生児期にはパルブアルブミンやカルビンジン、カルレチニン陽性の細胞体は観察されるが、陽性シナプスは認められなかった。生後30-90日は大脳皮質の各領野において、シナプスが過剰形成される時期であり(Rakic et al.Science 232:232,`86)、実際、非対称シナプスは多く観察された。生後60日になると少数の陽性シナプスが観察されるようになる。また、この時期、錐体細胞の細胞体周辺にパルブアルブミン陽性終末様構造が観察されたが、まだシナプスは形成していなかった。興奮性入出力系とGABAなどの抑制系では発達パターンが異なることが示唆される。
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