研究概要 |
本研究では、シナプス回路を形成する最も単純な神経細胞群のモデルとして鶏胚上頚神経節をとり上げ、神経節内におけるシナプス伝達機能の初期形成過程について解析を行った。 孵卵6-12日の鶏胚上頚神経節を、膜電位感受性色素(NK2761)で染色し、神経節へ向かう神経線維束の電流刺激に対するニューロン応答を、光学的多部位同時測定システムを用いて127ヶ所から同時に記録することに成功した。 電流刺激によって誘発される光学的シグナルは、スパイク状の相とそれに続く時間経過のゆっくりした相の二相性の成分から成る形状を示した。0.1Hzの連続刺激によって、第一相は殆ど変化しないが、第二相は指数関数的に減衰した。さらに、第二相は低Ca^<2+>液やd-tubocuranineで抑制された。このことから、第一相はpre-synapticなシグナルで、第二相はcholinergicなシナプス伝達を介したpost-synapticなシグナルであることが同定された。 神経節にはいる二つの節前神経線維束(N.caroticus cervicalis,N.vertebralis)の刺激によるニューロン応答の空間的パターンの違いから、神経節内部でのシナプス結合の空間的分析パターンを明らかにした。 個体発生の進行にともなうシナプス結合の発達を追跡し、そのマッピングを行った。明確なpost-synaptic responseは孵卵6日の神経節では観察されず、孵卵7日以降の神経節で発現し、post-synaptic responseの大きさとその発現領域は個体発生の進行にともなって発達してゆくのが見られた。
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