【目的と方法】本研究では、各種感覚(視覚、聴覚、体性感覚、口腔内感覚、および嗅覚)刺激と報酬との連合および異種感覚間の連合に関する扁桃体の役割をニューロンレベルで解明するため、純音、白色光の点灯、エアパフ、臭いなどの感覚刺激と報酬(蔗糖溶液、脳内自己刺激(ICSS)との連合学習をしているラットの扁桃体から単一ニューロン活動を記録し、その応答様式と扁桃体内の局在を調べた。 【結果】1.扁桃体から記録した総数1040個のニューロンのうち、387個はいずれかの感覚刺激呈示またはICSSに応答し、これら応答ニューロンは、一種類の感覚刺激に特異的に応答する単一種感覚応答型ニューロン(視覚、5個;聴覚、75個;体性感覚、75個;口腔内感覚、62個;嗅覚、11個)おび複数の感覚刺激に応答する多種感覚応答型ニューロン(120個)に分類できた。2.各単一種感覚応答型ニューロンの局在部位は各種感覚連合野からの投射線維の局在部位とよく一致し、また、報酬および報酬と連合した感覚刺激の両方に応答した多種感覚応答型ニューロンは、主に、基底外側核および中心核に存在した。3.逆転または消去学習をテストできた大多数のニューロンでは、その感覚刺激への応答性が減弱または消失した。4.報酬との連合学習により、学習に使用した感覚刺激に応答するニューロンの割合は増加した。 【結論と考察】本研究により、1.近年の解剖学的研究から予測されていた単一種および多種感覚応答型ニューロンがラット扁桃体内に存在すること、2.これらニューロンの応答は、各種感覚と報酬や異種感覚間の連合学習により出現すること、3.これらの結果は、われわれが以前報告したサル扁桃体ニューロンの感覚応答性とよく一致することなどを明らかにできた。
|