近年、マウスのNMDA型受容体をコードするcDNAが、東京大学の三品らによりクローニングされた。このNMDA型受容体は、神経細胞に発現している受容体同様にマイナス側の膜電位においてマグネシウムイオン(Mg^<2+>)により膜電位依存性に抑制を受け、電流電圧曲線上で負性抵抗を示す部分が出現する。更に三品らは、そのcDNAに点変異を導入してマグネシウムイオン(Mg^<2+>)により抑制されないクローンを作成した。このクローンはε2サブユニットcDNAとζ1サブユニットcDNAの両者の第二膜貫通部位(TM2)に点変異を導入し、翻訳されるアミノ酸配列のうち、それぞれ一個のN(グルタミン)をQ(アスパラギン)に置換したものである。私たちはこれらサブユニット遺伝子を含むプラスミドを三品より譲り受け、プラスミドからcRNAをin vitro合成し、アフリカツメガエル卵母細胞に注入し、培養後、電気生理学的実験を行った。二電極膜電位固定法により、卵母細胞全体に発現した点変異導入したNMDA型受容体の電流電圧特性を調べたところ、マイナス側の膜電位において、ほぼ直線状の電流電圧曲線が得られた。また、この電流電圧曲線の形は、高濃度(1mM)のMg^<2+>よって変化しなかった。Mg^2同様に膜電位依存性に電流応答を抑制することが知られるマンガンイオンやコバルトイオンによっても電流電圧曲線の形は変化しなかった。しかし、これらのイオンにより、電流量は7-16%減少した。この卵母細胞にパッチクランプ法を適用し、アウトサイドアウト法により単一チャネル電流を記録した。天然型の受容体ではMg^<2+>を加えるとチャネルの開時間が著しく減少し開閉を繰り返すようになるが、点変異導入されたNMDA型受容体では、これとは異なり、単一チャネル電流のコンダクタンスの減少が観察された。
|