研究概要 |
本年度においては、平成5年度科学研究費助成による「不完全性定理と『表現の形式と内容の対応の一意性』の問題の解決」で得られた成果を踏まえて、特に「命題における個と普遍」、及び「命題の自然な名前の構築」に関する研究を集中的に行った。 結果としては、 (1)命題に「個と普遍」を認めることができること、 (2)命題の名前の自然な構築機能をもつ論理言語体系を論理的に自然に構築することができること、 が、WRAGAI[1994](特に5章)、藁谷[1995]における研究を通して、部分的に、しかし充分な一般性を有する形で、明らかにされた。 特に本年度の研究課題中成果が顕著であった点は、命題の名前を、従来行われているような命題のラベルとしてではなく、命題の意味を正確に保存する能力をもつ形での論理言語の構築したことであり、かつ、その理論的強さを技術的結果に照した評価、及び、その哲学的含意について正当に評価を行ったことであるが、これらの点に関して特筆すべきことは、 (3)これらの研究結果により、Godelの不完全性定理、Tarskiの真理述語の定義不能性定理に関する洞察が、それらを巡る従来の考察より深いレベルにまで到達したと主張してよいこと、 (4)さらに平成5,6年両年度にわたって得られた結果の上に、来年度の研究指針として何を成すべきかが明確にされたこと、 を挙げることができる。
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