本年度の研究では、命題の名前を自然に記述する能力をもつ論理言語体系が昨年度に引続いて考察された。 その結果の多くは時間の関係等で未だに論文の体裁を取っていないが、多くの哲学的論理的結果をもたらした。その一つとして、命題の名前を自然に記述する能力をもつ論理体系は、これまでに自然と考えられてきた例えば集合論の幾つかの公理の自然さを、何ゆえに自然であるのかを合理的に説明することに成功したし(cf.Waragai〔1995〕)、また哲学及び論理学上大きな問題を常に提起し未だに未解決であるいわゆるLeibniz Lawの問題点の所在はどこなのかが明らかにされた(Cf.Waragai〔1996〕)。 加えて、それは「出来事の個別化」の問題に適用できることが示され(鈴木、藁谷〔1995〕)たが、この問題の延長上に、本研究の主たる課題である「命題に於ける個別と普遍」の一般的解決が見出されることがこれまでの研究結果から本職は確信を得た。 研究結果の一部は極めて重要なものである。即ち、論理レベルの混同がない限り、「もの」に関する言明と「こと」に関する言明は論理的手段では区別できないことが証明された。これは哲学者が暗黙裏に認めている命題と思われるが、それは実は証明可能な事実であり、我々の日常言語を支配する論理の枠組みで規定されているのである。 目下上記で述べられた考察及び結果をもとにした論文を複数準備中であること、よって本研究は問題の最終解決自身には至らないまでもその方針と結果はほぼ手中に収めたこと、従って研究課題の実質は達成されたことを付言する。
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