本研究の主たる結果は、以下の通りである。 1 命題の名前を自然な形で自己内部で構成できる論理体系を、通常の論理体系を自然な形で拡張して構築し、 2 それにより自然言語の表現能力を強化した。 3 その拡張により得られた体系の著しい特徴として、通常「集合論」特有の公理と看做される式の多くが定理として導出されることを示した。 4 その一つを上げれば、得られた体系では集合論の基礎的直観をなす「包括原理(principle of comprehension)」が定理となるが、 5 これは通常集合論の概念に訴えて行われている議論は、実際には自然言語に内在する論理に従って行われていることを示し、 6 従って、人間の知識の形式的表現手段としては現行の体系は不自然であり、 7 それ故、人間の知識の自然な表現手段としては本研究で開発された論理体系を用いることが望ましいことが示されたことになる。 8 同時に、この体系では命題に「個」と「一般」を区別することができるが、 9 この区別は現在「出来事」の哲学的分析にとって重要であることが判明した。 10 さらに、命題レベルに於ける「個」と「一般」の区別は通常の論理体系では単純に「個」としてしか認められていない概念(耐え「矛盾」等)を「一般」として表現することが出来るが、 11 その表現手段を考察する最中に、拡張された論理体系が、この観点からはさらに拡張されることができ、 12 その方法によれば、知識の論理的分類に関して現在通常用いられている論理体系よりもはるかに細かい分類を論理的に行うことが出来ることが判明した。 13 これに基づき、不完全性定理を考察するとき、従来の論理的枠組みでは考察できなかった、ないし表現できなかった事柄が考察・表現できることが判明し、 14 本研究の目的の一つである「表現の形式と内容の対応の一意性」を考究する形式的言語体系の確立の可能性が、その方法と共に明らかにされた。
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