平成6年度は実験による資料収集とその基礎解析を行った。被験者総数は49名。実験は32ビット・パーソナル・コンピューターのディスプレイ上に展開する仮想迷路からの脱出を課題として行った。全部で5回の試行で使用する迷路はどれもデパートのワン・フロアを模したもの。迷路に入り込んだ被験者の視点から見えるはずの景色が、プログラムに読み込まれた地図データに基づいてディスプレイ上に立体的に線画で表示され、被験者の反応に応じて変化する。迷路内での被験者の反応は、反応時間や付加データとともにすべてテキスト・ファイル上に記録した。特に第5試行の反応傾向を次の二つの観点から考察するために、すなわち(1) 第5試行においても繰り返される相棒のアドバイスへの対応の違いを見るために、(2) 第1から第3試行のデータから描き出した基礎的な反応傾向との差異を中心に反応傾向全般の変化を見るために、被験者ごとに、さらに試行ごとに脱出の成否、平均反応時間、平均停滞時間、通過セル種など9種類の指標を抽出し記録した。第4試行と第5試行ではさらに相棒からのアドバイスへの対応について11種類の指標を抽出、合計20種類を記録した。 被験者総数が49名となったのは、第4試行で強制終了しない被験者が49名中9名と予想外に多かったためである。次年度以降も必要に応じて被験者の増募が必要になろう。また第4試行において、1回目の被災直前の誘導アドバイスに不服を唱えた被験者は、すなわち、誘導アドバイスに逆らった結果第1回目の被災をした被験者は49名中2名であった。理論的には8種に分類されるはずの被験者が実際には4種にしか分類できないことが予測される。このような事態は、それ自体、研究目的に照らしてとても興味深いものであるので、次年度においても継続して現われるものかどうか慎重に見守りたい。
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