研究概要 |
平成6年4月〜8年2月末迄の研究期間中,ブラゼルトン検査(以下,NBAS)について104名の被験児を得た.これはNBASを適用できる該当者297名中,約35%の協力率を得た結果である.この104名中さらに追跡調査に応じたのが72名で,協力率69%である.72名中,この104名中さらに追跡調査に応じたのが72名中で,協力率69%である.72名中,家庭訪問と社会的参照・母子分離再会実験の両方に応じたのが43名で,実験のみに応じたのが29名である.そして2月末現在,社会的参照と母子分離再会の実験を終了したのが31名である. 1.NBAS:NBASにおける自己鎮静性・易刺激性と家庭における啼泣性・自己鎮静性・易刺激性との間の関係性は必ずしも高くはない.これは母親を代表とする環境との相互交渉の過程の中で,環境からの影響を受けやすい「脆弱な」児と,受けにくい「頑健な」児が存在することを示唆している.前者は母親の応答性に受容性に影響を受けやすいことが想定されるので,さらに症例が集った時点で詳細に分析する予定である.また,後者は環境刺激に対する閾値が高いことが考えられ,この視点からNBASのデータを再吟味する予定である. 2.母子分離再会の実験:母子分離再会の実験を終了した被験児数はまだ31名と少ないが,NBASの結果とアタッチメントパターンとの間には必ずしも明瞭な関係性は見られず,さらに症例が集まった時点で再度詳細に分析する予定である。本研究に協力している母親は社会階層的には中流に属するが,精神的に健康で知的好奇心が旺盛である.現時点で分析は終了していないが,児の成長に与える母親の影響があるとするならば,本研究に協力している母親は成長に肯定的な影響を与えていると推測される.従って,生後1歳の時点でのアタッチメントパターンには必然的にB群の占める割合が多くなるだろうと予測される。
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