茨城県つくば市には通産省工業技術院の研究所が8つ存在する。本研究では、このうちの2つの研究所を対象とし、それぞれの研究所に所属するすべての研究員を対象にアンケート調査を実施した。採択課題である「先端技術開発従事者のタイプA行動に関する社会学的研究」に最もふさわしい調査を遂行することができたわけであるが、これはひとえに両研究所の企画室のご理解があったからに他ならない。ここに記して感謝する次第である。 2つの研究所のうち、一方の研究所は調査の時期を年度末にしてほしいとのことであったので、調査票の回収を現在行っているところである。ここで中間報告できるのは、もう一方の研究所のデータの分析に基づくものであることを予めお断りしておきたい。 有効回収サンプル数は、218名である。性別の内訳は、男性が95.9%、女性が4.1%で、ほとんど男性のみを対象にしたのと変わりがない結果に終わっている。 タイプA行動を測定するための尺度として、ボットナー・スケール、東海大式日常生活調査表、A型傾向判別表の3スケールと燃えつき尺度をアンケートに組み込んでいる。これらのそれぞれのスケールの加算得点を被説明変数として、一元配置の分散分析を行ったところ、以下の知見を得ることができた。 (1)職業上の地位を、研究員、主任研究官、室長以上の3カテゴリーに分け、上記4つのスケール各々について分散分析を行ったところ、東海大式日常生活調査表、A型傾向判別表については有意差が見られ、管理職になるほどタイプA行動の傾向が強く見られた(ただし、ボットナー・スケールは有意差なし)。燃えつき尺度は関連がなかった。(2)一週間の勤務時間数を50時間未満、60時間未満、60時間以上に分けて、分散分析を行ったところ、東海大式日常生活調査表、A型傾向判別表、ボットナー・スケールの全ての尺度において有意差が見られた。燃えつき尺度は関連がなかった。(3)職業生活のゆとり意識をおおいにある、ややある、あまりない、全くないの4カテゴリーに分け分散分析を行ったところ、東海大式日常生活調査表、A型傾向判別表については有意差が見られた。ゆとり意識がない人ほどタイプA行動傾向が強く見られた(ただし、ボットナー・スケールは有意差なし)。また、燃えつき尺度との有意な関連が見られた。 なお今後は、もう一つの研究所のデータを直ちに入力した上で、交互作用を考慮した2元配置の分散分析、重回帰分析、林の数量化I・II類、因子分析などを行いことにより、これまで全く調査されることのなかった研究所の研究員について、タイプA行動という側面から多元的に分析し、研究を進めていきたい。
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