本研究の主要な目的は、先端技術研究者のタイプA行動レベルに影響を及ぼす社会的要因を明らかにすることである。本研究の対象者は、通商産業省工業技術院傘下の2つの研究所(つくば市内)に所属するすべての先端技術開発従事者815名である。そのうち、有効回答者は、部長、室長、主任研究官、研究員を含む374名で、有効回答率は、45.9%であった。回答者の年齢のレンジは24〜60歳であり、平均年齢は、42.5歳であった。一方の研究所については平成6年度に、もう一方の研究所は平成7年度に、それぞれ調査が実施された。 先端技術研究者のタイプA行動レベルを測定するために、ボ-トナー尺度、東海大式日常生活調査表、A型傾向判別表の3尺度を用いた。 主要な結果は以下の通りである。 1.タイプA行動者の割合は、東海大式日常生活調査表による場合には、19.8%、A型傾向判別表の測定では、28.3%に達した。 2.それぞれの尺度について、加算得点を被説明変数として一元配置の分散分析を実施した結果、主観的健康感が、東海大式日常生活調査表でのタイプAレベルに有意な影響を及ぼした。さらに、職業上の地位と一週間あたりの平均勤務時間の2変数は、上記の3つの尺度すべてについて、タイプAレベルに有意な影響を及ぼしていることが明らかになった。一週間あたりの平均自由時間は、東海大式日常生活調査表とA型傾向判別表の2尺度において有意な影響を及ぼしていた。 3.重回帰分析を行なった結果、職業上の地位、一週間あたりの平均勤務時間、一週間あたりの平均自由時間の3変数が、タイプA得点の変動に有意な効果を示すことが分かった。すなわち、管理職であるほど、勤務時間が長いほど、自由時間が少ないほど、タイプA行動のレベルが高いことが明らかになった。一方、回答者の性、年齢、主観的健康感といった基本属性は何の効果も持たなかった。 なお、職業上の地位、一週間あたりの平均勤務時間、一週間あたりの平均自由時間の3変数のうち、2変数を選んで、交互作用があるかどうかを二元配置の分散分析で確認した結果、いずれの組み合せについても、交互作用は見られなかった。
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