平成7年3月においては、生体臓器移植に関する調査項目の選択およびアンケート用紙の配付・回収がかなり進み、その結果をもとに面接調査も開始した。 結果としては、本研究の主題であるドナー(臓器提供者)が健常者であり、その健常者にメスを入れることに関しては、本人が真の意味で同意していれば肯定できるという者が多かった。しかし、本人へのインフォームド・コンセントがどこまで正しく伝わっているかに対する疑問や、本人の同意が周囲の目を気にしてのもの(特にドナーが親の場合)ではないかなどの問題点も指摘されている。 また、回答者のその専門性という観点からみると、宗教家および医師は、ほとんどの者が生体臓器移植に関しては精神的・社会的・倫理的な面において問題がないと捕らまえ、むしろもっと早く法的にも認められるようにするべきだという意見もあった。 しかしこれに対し、司法関係者はたとえドナーが同意したとしても法的にも倫理的にも問題が残るとし、生体臓器移植に対しても、慎重に行うべきだという消極的な意見が多かった。また、一般の主婦や社会人は、生体臓器移植についてある程度のことは知っているが、それを社会的・倫理的な面からはどう思うかという質問には、「わからない」が最も多かった。 また、大学生を中心とした学生は、生体臓器移植に対する知識も少なく、回答そのものが倫理的な意見というよりも感覚的な意見を述べる者が多かった。 今後の課題としては、これらの結果をふまえ、直接回答者に面接調査することで、生命倫理の立場から分析を進める。来年度は、特に宗教家および医療関係者からの回答を中心に考察を加えたい。
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