本研究の目的は、国際的に関心が高まっている地球上における共有資源の管理と運営について、だれでもが自由にアクセスできる「コモン」と特定の成員しかアクセスできない「コミュナル」という概念を用いて、隠岐ノ島の知夫村と島根半島の美保関町での共有資源の管理とあらたな適応の仕方を、現地調査をつうじて現代社会における共有資源管理の特性を浮き彫りにしようとするものであった。 本研究でえられた主要な成果は、以下のとおりである。 1)環境認識の指標として、漁場および放牧地の地名を聞き込みと地図によって拾いだし、その共有制と資源へのアクセスについて、知夫村と美保関町における比較を行った。その結果、コモンとコミュナルによる明確な資源へのアクセスの境界がひかれており、その利用の規制が明らかになった。また、大きな市場に近い美保関町においては、定置網を使った漁業組合による株組織がおこなわれ、じっさい生業にたずさわらない株主にたいしても収益の配当がなされるなど現代的適応戦略が採用されていた。 2)海を共有資源とする二つの漁村においては、海に関する祭礼が伝統的におこなわれてきたが、知夫村では過疎により衰退していったのにたいし、経済的に安定している美保関町では今日なお祭礼がひんぱんにおこなわれ、海との関連が生業レベルでもまた世界観のうえでも保たれていた。このことは、将来の共有資源にたいする持続性の違いにも関連してくるように思われるが、今後の調査を続けることによって、そのことを具体的に裏づけていきたい。 3)当初予定していた作業日誌などの調査は行うことができなかったが、今後継続調査をこころみていきたい。
|