研究概要 |
クリーニング法の確立のため、薬剤の選択を行うための基礎実験を2種類行った。 1. 銅板を薬剤に浸漬し、減量実験をおこなった。キレート剤2種類、EDTA・3Naとグルコン酸系キレート剤・キレストGB(商品名)の5, 1, 0.5, 0.2%にそれぞれ各10枚づつ浸漬し、pHと導電率を順次計測し、7月と2月に計量を行い腐食度をみていった。また各計測時に、サンプルをとり、銅イオンの量も見ていった。 その結果は、EDTA・3NaがキレストGBの倍の腐食度を示し、キレストと比べるとかなり強力なクリーニング剤となる。EDTAは実験の範囲では濃度が高いほど、腐食度が高くなったが、キレストGBは1<0.5<0.2<5の順の腐食度を示した。 2. 現地で現状の腐食状況を8つのタイプに分け、それぞれから合計30点選んで錆の観察、脱塩効果、保存処理を平成6年の夏から行った。その結果は、表面に厚く濃緑、白緑色の錆で覆われたものが、ほとんどについて地金が残っていないし、高濃度の塩素が検出された。 1、2の実験と平成7年の夏期調査時までに行った合計1千点のコインの処理から、今後の処理方針を導き出し得た。これはキレート剤を用いた1方法で、今後さらなる処理方法の検討は言うまでもない。 またこれからのデータも含めて、今後処理し、本遺跡の出土コインの腐食生成物の特徴についても、より詳細に検討していきたい。
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