第1に、文献研究をもとに、バイリンガリズム研究に関する専門用語を整理し、英語と日本語の対訳一覧を作成した。それに加えて、さらに、解説つきのグロッサリ-の作成に取り組み、第一次原稿ができあがった。 また、コード・スイッチングに焦点を合わせ、その研究の問題点に関して考察し、その議論を著書「コード・スイッチングをめぐる諸問題」で発表した。 第2に、フィールド・ワークによってコード・スイッチングに関するなまのデータ収集を行った。まず、大学生、高校生の帰国生を対象にインタビューを実施し、基礎的な資料を集めた。それをもとに、コード・スイッチングに関する調査書の作成に向けて、その枠組みを検討している。 また、多言語話者を対象に、実際の多言語使用の実態を録音し、書き取って記録した。そのなまのデータをもとに、コード・スイッチングの要因を抽出し、社会的・心理的要因にもとづく分析を行った。その中から、バイリンガルの言語能力に関して、古いモノリンガルの尺度を乗り越えて、新しい見方が生まれてきたことは新しい発見である。また、コード・スイッチングにおいて、言語間の普遍性と同時に、日本的な特異性も浮かび上がってきたことは大きな収穫である。これらの一部は論文「バイリンガリズムの観点からみた外国語能力」に発表した。 第3に、当研究から得られた知見をもとに、「バイリンガル教育」および「バイリンガリズムの研究方法」に関する国際研究集会において、それぞれ、口頭発表を行ったり、学術討議を主宰した。
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