平成8年7月には平成7-8年生に対し、帰国後テストを行った。有志7人に対し個別英語インタビューテスト、英語感情表現能力を測定する手段として朗読テスト、さらに、その他のコミュニケーションテストを実施した。これらは、すべて、ビデオおよびカセットレコーダーにより、録画、録音した。 8月には、平成6年から7年の成果を、フィンランドで行われた国際応用言語学会で発表した。またこれまでの質問紙によるデータをすべて入力り、重回帰分析、パス解析などの統計手法を駆使し分析を試みた。分析の結果、出発前の英語力と性格傾向(外向性)が、適応の因子の一部を予測できることが再確認された。またパス解析の結果、アメリカでのソーシャル・スキルの実施が適応に果たす役割が明らかになった。これらの調査により、外向的な性格傾向をもつ学生は、積極的な発話、表現に関するソーシャル・スキルを実施することにより、対人関係面の満足を得やすいという、筆者の仮説が基本的に支持された。一方で、適応を自分の心理的満足度、安定と捉えるか、他者から見た効果的対人行動と捉えるかにより、適応に影響を与える変数も異なるという新たな知見が得られた。 さらに、より言語学的な研究として、録音したインタビューを書きおこし、その内容分析をすると同時に、発話速度、サイレントポ-ズなどのためらい現象についてコンピューターを使用し詳細に分析を行った。その結果、留学後、学生たちのスピーチでは、ためらいを表わす諸要素が減少する一方、発話速度が有意に上昇し、客観的データによっても、ネ-ティブスピーカーの主観評価によっても「流暢さ」が増していることが確認された。
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