研究概要 |
1.神学と文学との間の相互影響の現在の端的な相として,聖書学者による文学理論の援用と、文学研究者による聖書テクストの理論的分析,の両面が見られる。本研究は,聖書学と文学理論のそのような相互浸透の現状について,基礎的調査研究を行うものである。 2.(1)本年度は次の研究を行った。ハンデルマンの指摘にある,ラビ的思想とメトニミの関連を,広く詩学の中に位置づける作業を行うための基礎的な研究を行った。 (2)その問題に最も関連すると思われる言語学的枠組みはラ-コブソンの詩学である。事実,この詩学が聖書学・文学の両領域の研究者に理論的基礎を与えてきている状況に鑑み,こでに依拠する聖書学者・文学理論家の方法論を具体例に則して検討した。 (3)具体例としては,英語で書かれたパウンドの詩とヘブライ語で書かれた箴言の詩とをとりあげた。両者に共通の隠喩的構造が見られることを指摘するフライの研究を出発点とした。さらに,ヤ-コブソンの詩学に依拠する聖書学者・文学理論家の方法論の適用を検討した。 (4)その結果,こうした聖書学者・文学理論家の方法論は,テクストに対する新たな知見を獲得し得る可能性があること,しかもその方向はハンデルマンの指摘との関連が予測されることが,判明した。
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