研究概要 |
1.神学と文学とは互いに影響を与え合っている。現在は,聖書学者が文学理論を援用し,一方,文学研究者は聖書テクストを理論的に分析している。本研究では,聖書学と文学理論のそのような相互浸透の現状について,基礎的調査研究を行っている。 2. (1)本年度は次の研究を行った。聖書学者バーリンらの研究を検討した。その中で浮かび上がってきた,並行法に関する,神学・文学周辺の諸領域にわたる問題点について,新たに検討する必要性を認識した。 (2)諸領域とは,聖書学はもちろん,文学理論,さらには言語学にわたる広範な領域である。これらの領域の最近の学問的成果から,特に,並行法のモデルそのものに関する修正,および,並行構造の一角をなす韻律論に関する修正の必要性を認識した。 (3)具体的には,並行構造の要素数を伝統的な2に限定せず,3以上の可能性を認めるという修正と,生成韻律論の成果を踏まえた韻律論に精密化ということである。 (4)並行構造の要素数に関する修正は特に箴言について言われており,これは拙論「パウンドの詩とヘブライ詩」(1995)で取り上げた問題に新たな光を投じる。さらに,そこで取り上げたパウンドの詩の韻律構造について,(3)の観点から精密に考察する方向性を展望した。
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