ローマ法大全、とくに学説彙纂の全文テクストを利用して、ローマ法語彙のデータベースを作成し、対訳や語彙集・辞書を参考にしてローマ法文を理解するための支援システムを構築することを念頭に、そのために必要な基本的な条件を研究することが本年度の課題である。ラテン語のコンピュータ解析のために利用可能な処理系がえられなかったので、英語・日本語処理用および汎用の処理系を応用することを試みた。そのためには、ラテン語文法を論理プログラムによって解析することがひつようである。また、単語を反転することによって、後ろから文法上の可能性を絞り込むアルゴリズムを検討した。単なるパターンマッチを超えて、膨大な史料から必要な個所を検索し、その論理的に正しい理解のための手がかりを与えるためにはテクストの構造化された知識のなかで位置づけなくてはならない。限られた資源のなかで利用可能な情報を引き出すために統計的方法と論理的方法が文法知識を補わなくてはならない。とりわけ、従来のインテルポラ-チオや正文批判は古典文法を根拠としていたが、これに対して統計と論理が強調されるべきだという確信をつかむことができた。現代的慣用時代の史料におけるテーマの統計処理という課題を連携させることが次の展望である。
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