研究概要 |
憲法第25条の生存権規定は、人間の「健康で文化的な」最低生活保障という具体的意味の場合、従来「健康で」という生物学的な生存権に比重が置かれ、「文化的な」という社会学的な生存権の観点は弱かった。「文化的生存権」が「健康的生存権」から区別され独立した意義を持っているし、持つ必要があることを、各国比較のなかで検証しようとするのが本研究の目的である。 1994年度は、第一に、文献検索により、憲法第25条関係の従来の研究・判例の全リストアップおよび「文化的生存権」に関する日本の学会水準の確定を行ない,研究構想をまとめ、調査対象((1)分野、受刑者、生活保護世帯、および義務教育(2)国、ニュージーランド、スイス)を決定した。 第二に、国内でのフィールド調査、とくに受刑者、生活保護世帯、および義務教育における文化享受権の保障の基準と実際を調査中であるが、手始めに受刑者については、府中刑務所、和歌山女子刑務所、神戸刑務所、堺刑務所等を調査する予定であるが、今のところ、調査が完了したのは和歌山女子刑務所のみである。府中刑務所等、調査者と対象の先方と日程調整が困難で遅れている。 第三に、外国のフィールド調査は、とくに子どもの理想郷と言われるニュージーランドでの実態調査を私費渡航により今年度行なう予定であったが、残念ながら私的な財政的事情により果たせず、来年度かならずニュージーランド渡航を果たすことを約束する。(スイスでの実態調査は、私費渡航により、さ来年度行なう予定である。) 第四に、初年度報告書として(1)研究ノート(学会サーベイランス)を作成中である。
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