1.文献ならびに現職のカウンセラ-からの聞き取り(英国のそれも含まれる)によって次のような結論に達した。 2.カウンセリング機関が提供する援助は、法的観点から見ると曖昧な状況にあると言われる。 第一に、カウンセリング行為は医師などによる通常の治療行為とは以下の点で異なっているので、その法的性格が明らかでない。(1)カウンセリングでは、「治癒」が利用者の主観的判断に多く依るため、目的達成が判断しにくい。従って、行為の目的が明確でない法的関係はありうるかと問われる、(2)カウンセリングの行為が、通常「話を聴く」というものであり投薬や手術など積極的に利用者へ働きかける性格をもたないことが多い。 第二に、カウンセリングの行為と利用者が主張する「被害」との因果関係の立証は難しい。 第三に、カウンセリングの利用者は囚われの状況には通常ない。常に自由意思でカウンセリングにかかわるので、その結果に対しても責任を自ら負うべきである。 3.しかし、カウンセラ-は法的責任をまったく問われないかは疑問である。 (1)自ら「専門家」であるとする以上、専門家としての関与とそれによることが濃厚な結果に対して第一に倫理的責任が考えられる、(2)カウンセラ-と利用者との関係は、利用者の状況を「良くする/軽くする」という合意のもとに成立している以上、程度の問題は残るが契約関係にあると考えられる、(3)通常、カウンセラ-は援助によって利用者の状況を良くするとしてカウンセリングを行うのであり、目標はあると見なければならない、(4)利用者の損害が主観的であったとしても、現行法は慰籍料の概念を認めるのであって、主観的であることが責任追及の決定的な阻害要因にはならない。 このように考えると、現実にカウンセリングで精神的被害を受けたと主張する利用者に対して法的救済を提供する可能性はあると考えられる。
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