研究概要 |
労働省「労働組合基礎調査」によれば,1994年の推定組織率は24.1%で,いまや組織労働者は全雇用者の4人に1人を占めるに留まっている.こうした状況では,組織率低下の規定要因の分析にも増して,労働組合のない企業における労働条件の決定や労使関係の実態がいかなるものかの解明が,きわめて重要な課題となる.本研究の目的は,これまでわが国で研究の不十分であった労働組合のない企業における労働条件の決定と人的資源管理の実態を,労働組合のある企業との対比において分析することにある.分析方法は,企業アンケート調査と聞き取り調査による. 平成6年度は,この問題に関する先行研究の展望を行った後に,組合のある企業と組合ない企業を対象とする聞き取り調査を行った. (1)まず初めに,本研究に先行する研究や調査の包括的な展望を行った.とりわけ,日本におけるいくつかの調査研究(たとえば,東京都立労働研究所『中小企業における従業員組織の役割』や企業内コミュニケーション研究会『中小企業における企業内コミュニケーションの実態』)とアメリカにおけるノン・ユニオン・システムの研究を吟味した. (2)次に,産業別(製造業,情報サービス産業,卸売,小売業),企業規模別(99人以下,100〜299人,300人〜999人,1000人以上),労働組合の有無別に注意深く選定された企業30社の聞き取り調査を行った.その結果,企業属性や従業員属性に加えて,それらの企業における労働条件の決定メカニズム,企業内発言機構の構造と機能,労働組合組織化に対する経営側の態度などに関する詳細な情報を収集することができた. 当初計画ではアンケート調査を先に行う予定であったが,先行研究の展望だけでは調査票設計に十分な情報が得られないと判断されたため,本年度は聞き取り調査を先行させた.その結果,従来の研究では不明であった点がかなり明らかになったので,その成果を反映させて,来年度にはできるだけ早くアンケート調査を実施したいと考えている。
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