研究概要 |
1.平成7年度には,首都圏(東京30km圏)に本社のある民営企業から従業員規模50人以上の企業1250社を無作為に抽出し,調査員による質問紙留置法によるアンケート調査を実施した.その結果,516社から有効な回答を得た(回収率41.3%).調査では,(1)労働組合の有無,(2)労働組合のある企業の企業内発言機構の組織状況と従業員の発言状況,(3)労働組合のない企業の企業内発言機構の組織状況と従業員の発言状況,(4)経営側の労働組合に対する考え方,(5)賃金交渉制度との関連,(6)経営戦略と人事労務管理戦略,(7)企業属性,企業業績,労働条件諸事項などを詳細に質問した. 2.データのクロス集計分析と計量経済分析の結果,暫定的ではあるが以下のようなことが判明した.(1)企業の有組合率は29%である.有組合企業と無組合企業の企業内発言機構を比較すると,(2)まず有組合企業では,団体交渉と労使協議をきわめて高い割合で実施しているが,労使コミュニケーション上の機能評価は労使協議のほうがやや高い,(3)次に無組合企業では,労使協議の実施率は3割以下でそれほど高くないが,従業員組織の組織率は63.6%とかなり高い.労使コミュニケーション上の機能評価では,労使協議や従業員組織よりも職場懇談会や経営方針発表会のほうが高い.(4)企業内発言機構の経済的成果に注目すると,ほとんどすべての労働条件事項や経営事項をめぐって,労働組合は労働者の発言を促しているが,従業員組織や労使協議制は労働者の発言を促す領域は限られている.しかしながら,発言の結果を離職率でみると,労働組合であれその他の発言機構であれ,離職率に影響を与えていない. 3.次年度は,以上の結果をより精密に吟味し,またその含意を探り,聞き取り調査の結果と合わせて,研究成果報告書としてとりまとめる予定である.
|