研究概要 |
旧ソ連・東欧諸国における市場経済移行が予想以上の,きわめて深刻な困難に直面していることの原因をめぐっては前年度で総括的な分析を行ったが,今年度はそれを踏まえて,そのような難局を打開するための有力な手掛かりとして,まず市場経済の原点に立ち返り,市場経済にふさわしい再生産・資金循環メカニズムを構築する必要があるという視点から,金融改革が最優先課題となることを論じた。というのは,現在の悪循環は,体制転換不況→企業業績の悪化→金融部門の不良債権累積→金融部門の機能不全→不況の深刻化というパターンによって特徴づけられるが,それを絶ち切るためには金融部門の健全化が何よりも基幹的重要性をもっているからである。また,金融改革という場合,銀行主導型システムと株式市場主導型システムの二つが大別して考えられるが,旧ソ連・東欧諸国の場合について言えば,時間との競争に迫られていることから考えても,またこれまでの経験から考えても,前者のシステムの方がより適合的であり,それ故銀行部門の改革に重点が置かれるべきことを主張した。 旧ソ連・東欧諸国における市場経済移行の難航ぶりとは全く対照的に、中国における市場経済移行は目覚ましい成果を挙げているが,なぜこれほどまでに結果が異なるかはきわめて興味ある問題なので,両者のアプローチの相違を経済体制論的観点から比較検討し,一応の結論を出す考察をも行った。
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