今年度における研究実績の概要は次のとおりである。 1.日本の高齢者は世帯主(最多収入者)ないし世帯主の配偶者となっている者が多く、1989年時点ですでにそのような者が多数派(60歳以上の61%強)となっていた。 2.高齢者自身が世帯主ないし世帯主の配偶者であるケースが1989年時点において同居高齢者の36%を占めていた。また同居高齢者であっても未婚の子供や子供以外の者と同居している者の年間収入は比較的高い。日本の同居高齢者が「経済弱者」であるという従来の通念は事実の半分にすぎない。 3.同居世帯の持家率はきわめて高い。また同居すると消費支出の節約が可能になり、貯蓄フローにも厚みが加わる。同居世帯では貯蓄をとりくずす必要性がきわめて小さい。 4.同居率の低下は日本の貯蓄率を低下させるおそれが強い。 5.共働き世帯が増加すると世帯所得は総じて上昇し、貯蓄率も引き上げられる。妻の労働力率が今後とも上昇しつづけると仮定すると、日本における家計貯蓄率の低下はその分だけスピードダウンすると予想される。 6.遺産動機は一般に資産保有額が多かったり相続経験のあったりする者ほど強い。 7.相続資産額の平均値は約5500万円、中央値2500万円であった(1992年評価額、経験世帯のみ)。 8.総資産に占める相続資産の割合は1992年時点の日本において全体で33%であった。 9.相続資産がとりくずされる例は比較的少なかった。
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