本年度は、第1に地方財政の現状の分析、第2に宮崎県「国土保全奨励制度」の意義についての理論的な問題の分析を行った。 1、地方財政の現状分析 本研究が、対象とした宮崎県を中心とした全国の地方財政の動向について、『地方財政白書』『地方財政統計年報』をもとに分析した。その結果、地方単独事業をはじめとする投資的経費の増加が、1980年代後半からみられた。とりわけ、単独事業の増加は、大都市圏に集中していること、及び他方圏においても都市部に集中していることが判明した。こうした傾向は、「ふるさと創生」事業以降の地域の自主的な地域づくりによってもたらされたものである。 2、他方、宮崎県など多くの過剰地域をかかえるところでは、過疎化はとどまる気配が無い。他方財政において、投資的経費が急増するなかで過疎化は進行するという事態にわが国は直面しているのである。そこで、宮崎県が全国にさきがけて提唱した「国土保全奨励制度」の意義について考察した。その結果は次の通りである。従来の過疎法に基づく財政政策や最近の地域づくり財政政策に共通する正確は、投資的経費中心の過疎対策・地域づくりということにある。宮崎県の提唱する「国土保全制度」は、森林や農地の多様な公益的機能を認め、その間接的な経済効果に適正な対価を支払うことが必要であり、それによって安定した所得を確保しもって公益的機能の担い手が確保されると主張している。このアプローチは、従来の投資的経費中心の財政政策から経常経費中心の財政政策への転換を意味している。 3、以上の事を、みやぎん経済研究所『調査月報』(1995年8月)に「中山間地域活性化と財政政策-宮崎県「国土保全奨励制度」の意義-」として投稿した。
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