平成6年度の最初の1カ月ばかりは前年度末からの持ち越しのGroebner basisについての小論文のまとめに費やした。本研究において本質的な役割を果たすわけではないが、この論文のテーマはMathematicaによる実験をその一部とするわれわれの研究の本筋に沿ったものである。 以後、本年度の研究実施計画のとおり「ind-affine多様体とind-affine代数群の理論の構成」に入った。基本的には、かなり長くなりそうな論文 “The Jacobian Problem from the viewpoint of ind-affine geometry" のはじめの基礎理論の部分を書いてゆくという仕事である。少し書き、ちょっとした証明の上の困難にぶつかると、なんとか解決後また少し書き加えるという作業の繰り返しであった。残念ながら進捗度が高かったとはいえない。予定では本年度中に原稿としてはほとんど全部できあがるはずだったが、実際は約3分の1程度の、第1章プラス・アルファというところしか完成していない。この年度中に新たに得られた知見として、自己同型群Gをind-affine varietyとみたときの座標環が整域であることが証明できた。この結果は悪くないと思う。 振り返ってみて、進歩の遅い、反省するところの多い一年だった。だが、現在4年目をつとめている数理学科長職は今年度末をもって任期満了となるので、雑務が大幅に減少する平成7年度こそは研究を強く推進させようと心に期している。
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