研究概要 |
本研究の主な標的はヤコビアン問題である。n-次元複素アフィン空間C^nからそれ自身への多項式写像がいたるところ局所的な可逆ならば大局的にも可逆かを問う,今や周知のこの問題は多数の才能ある数学者たちの挑戦にもかかわらずn=2の場合でさえ未解決である。 われわれはI. R. Shafarevichが提唱した「無限次元代数多様体および代数群」の理論に着目し,これのヤコビアン問題への応用を考えついた。ただし,この理論は代数的・位相的構造をもつ集合であるところの多様体から出発しており,そのため対応する関数環は初めから0以外のべき零元をもたない。このままではわれわれの構想した応用には役立たない。従って,当初から本研究計画は2段構えであった。すなわち, 1.古典的アフィン代数の射影的極限であるpro-affine代数から出発してその双対であるind-affine多様体や群の理論を建設する 2.この新理論をヤコビアン問題に応用する 本研究の初年度である平成6年度はあまり進捗がみられなかったが,2年目である平成7年度にはかなり能率があがり,平成7年秋の時点では上の1.はひとまず完成し “Pro-Affine Algebras, Ind-Affine Groups and the Jacobian Problem"(28pages/A4) と題する論文にまとめられ,既にJournal of Algebraに掲載決定(accepted)となっている。 平成8年度には2.に向けて全精力を傾注するつもりである。
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