研究概要 |
Jacobian問題の解決を志向する本研究は1994年に始まった。3年の交付期間の前半の成果は1996年10月にJournal of Algebra(第185巻)に発表された論文 "Pro-affine algebras,ind-affine groups and the Jacobian Problem"(21 pages) に要約される。平成8(1996)年度はこの論文に展開された理論を基に問題の追及が実行された。 われわれはn次元複素アフィン空間の主自己同型群Gと同空間の主自己準同型でヤコビ行列式=1となるもの全体のなすモノイドUとをind-affine多様体として捉える。自然な埋入G→Uがあり、G=Uが示せれば大団円である。既に上記論文でこの埋入が閉であれば問題は解決することが証明してある。本年度中に得られた知見は 1.Inverse limit lim←(・)はpro-affine代数の文脈では右側にも完全関手として作用するかという希望的観測には反例が見つかった。この結果、閉埋入性を証明する為にはGやUの定義イデアルを研究するしかなく、これは困難である。 2.G→Uが局所的に開写像であることを示しても問題は解決することが判明し、しかもこの写像はGの単位元eの近傍でetale mapと類似の性質を持つことも証明できた。これは大いに希望のもてる新展開である。問題はind-affine多様体ではetale mapが何であるべきかも分かっていないことである。 3.前項に関連するが、より根本的な問題としてind-affine多様体の位相は今までのように安易にZariski位相を拡張したものではうまく行かないらしいことに気づいた。また、上記論文に展開された理論はまだまだ初等的であり特にLOCAL-GLOBALの関係をきちんと理論付けする必要があることは宮西正宜氏(阪大,理)にも指摘された。今後の課題は全項2を踏まえた上での理論のさらなる発展を目指すことである。
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