研究概要 |
Jacobian問題の解決を志向する本研究は1994年に始まった。 われわれはn次元複素アフィン空間の主自己同型群Gと、同空間の主自己準同型でヤコビ行列式=1であるもの全体のなすモノイドUとをind-affine多様体として捉える。すると自然な埋入G→Uがあり、G=Uを証明することが最終目標である。この為にはこの埋入が閉であることを示せば充分である、というのがわれわれの出発点となる発見であった。 3年間の研究期間のほぼ前半を費やしてわれわれはpro-affine代数とind-affine多様体・群の基礎理論を構築し、上述の閉埋入性が問題解決の充分条件であることを厳密に証明し、さらには閉埋入性を示すためには何が言えればよいかを調べた。この部分の成果は1995年11月に投稿されて1996年10月にJournal of Algebra(第185巻)に発表された論文 “Pro-affine algebras, ind-affine groups and the Jacobian Problem"(21pages) にまとめられている。 研究期間の後半においてはG→Uの閉埋入性を確立すべく努力したが、この為の充分条件が幾つかあるうちの一つには反例をみつかり、この方向での展望はやや悲観的となった。他方においてはしかし、新知見として、G→Uが局所的に開写像であることを示しても問題は解決することが判明し、しかもこの写像はGの単位元eの近傍でetale mapと類似の性質を持つことも証明できた。これは大いに希望のもてる新展開である。この方向での解決を目指す努力は既に始めたが、まとまった成果と言えるものは未だない。まず、われわれの理論での位相の入れ方から見直し、LOCAL-GLOBALの関係をきちんと定め、etale mapとはわれわれのカテゴリーではどう定義すべきかを探り、最終的には埋入G→Uが局所的に開写像である(あるいは閉写像である)ことを証明したい。
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