研究概要 |
本研究で取り組んだテーマは,1.リエナ-ル方程式の解の性質(周期解の存在や振動性など)とその生態モデルへの応用及び 2.関数微分方程式の解の指数漸近的安定領域についてである。交付申請書に記載した研究目的(i)〜(iv)はテーマ1に,研究目的(v)はテーマ2にそれぞれ対応する。 1.リエナ-ル方程式を研究する上で,特に重要な問題は解軌道が(1)原点に漸近するか否か(2)特性曲線と呼ばれるものに交わるか否かである。この2つの問題が解決されれば,周期解やセパラトリックス(周期解とそれ以外の解を分離する役割を果たす特殊な解)の存在・非存在についても判明する。本研究では,問題(1)及び(2)に関する判定基準を与えた(Nonlin.Diff.Eq.Appl.)。その結果,セパラトリックスの性質が明確になった。セパラトリックスの一種として,ホモクリニック軌道が有名である。周期解に関する従来の研究では,ホモクリニック軌道を持たないリエナ-ル方程式についてだけ考察されてきた。本研究では,ホモクリニック軌道を持つリエナ-ル方程式に周期解が存在するための条件も求めた(Disc.Cont.Dynam.Syst.)。また,セパラトリックスの性質によるリエナ-ル方程式の分類が可能となった(J.Math.Anal.Appl.)。以上により,研究目的(i)〜(iii)は達成された。さらに,振動論への応用として,オイラー型非線方程式や外力項を含むリエナ-ル方程式の解の振動性についても考察を進めた(Proc、Inter,Con.Dynam,Syst.Chaos,Proc.Amer.Math.Soc.,Diff.Integ.Eq.)。研究目的(iv)に関して,補食者・被食者モデルに周期アトラクターが唯一つ存在するための必要十分条件を得ることができた(Appl.Math.Lett.,Proc.Amer.Math.Soc.)。 二次元の差分微分方程式の零解が指数漸近安定になるための必要十分条件を求めた(Funk.Ekvac.)。
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