近年の天文学では、高度なディジタル技術を活用した観測手法により、精密な画像データが得られる様になった。このような観測で得られたデータから、実際に天体で起こっている現象を解明するためには観測データの解析とともに、理論計算による詳細な検討が必要となる。このためのシミュレーション計算は大規模なものとなり、一台の計算機で遂行できるものではない。ところで、小型計算機が複数台使用できる環境は大学の研究室単位でも整備されている現状がある。これに関しては平成6年8月に大阪大学理学部において実情を調査した。この研究では、複数台の小型計算機を活用するための水平分散処理による理論シミュレーション計算遂行のための環境の有効性を明らかにすることを一つの目的としているが、その際に分散環境の評価をどのように行なうかが重要な問題である。平成6年度には分散処理環境を整備し定量的な評価基準を行う準備のために世界標準となっているPOSIX準拠のオペレーティングシステムを備えた小型計算機を購入し、同型機種間での通信方法、及び異機種間での通信方法の基礎的な研究を進め、水平型の平等な分散処理を行う環境について、数値的な評価ができる手法を開発した。購入に当たっては、様々なオペレーティングシステムの比較検討により分散処理に必要な基本要件について深く検討することができた。また、異なる階層のネットワークに接続されている計算機による垂直分散処理方法の評価手法について基本的な考え方を検討した。平成7年度には、水平・垂直分散処理環境について定量的な評価を確立し、実際の天文学研究において有効となる分散処理システムを探る。更に、いくつかの機能を分担して進める分散処理と、一つのジョブをソフトウエア的に複数の計算機に分配し、統合的に実行する分散処理方法について比較研究をすすめる予定である。
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