Si(Li)型検出器のコンダクタンスで観測された不安定な共鳴状態についてその発生機構を研究した。サンプルとして、Au-Si-A1構造のSi(Li)型検出器を作り、検出器のC-V特性、I-V特性及び光電流集積効率の電圧依存性を長期間精密に測定した。検出器感度の変動として認識されるものは時間特性からみて10日程度の短期なものと100日程度の長期なものとに分類される。長期の変動は表面酸化膜厚の1nm以下の微少な増加に起因すると結論した。短期の変動は表面状態の変動に起因するもので、時間特性から不安定な共鳴状態は表面状態の変動に起因すると結論した。尚検出器感度で位置依存性の著しい領域ではコンダクタンスの電圧依存性が複雑で、その原因は主に空孔型欠陥によると考えられる。以上の結果から、共鳴状態に関する研究では表面形成直後のサンプルが重要であるので、表面形成後の変動を極力抑制するようにした。サンプルの光電流集積効率は赤外線照射装置を製作して測定された。データの再現性確認のため、サンプルを乾燥空気中におき、摂氏25度に保持し、波長1150nmの光を照射し、所定のデータ集積をした。データ解析の結果、コンダクタンスの電圧依存性でピークを認めた。またピークが照射時間の経過とともに低電圧側に移動することを確認した。現段階では明瞭ではないが、コンダクタンスで構造が認められるので、データ集積とその解析を継続している。再現を確認でき次第、気体雰囲気及び温度範囲を変えてこの問題を系統的に研究する。また実験結果を学術誌に発表する予定である。
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