前年度では、研究会での議論を通して得られた科学的見地から本システムに求められる機能の整理を行った。本年度では、主に磁力計本体の試作、及び、それを用いた磁力計の地上校正試験方法・異なる温度環境下における磁力計の性能評価等の基礎データの収集を行った。また研究の一環として、現在飛翔中の「あけぼの」「GEOTAIL」で観測されている磁場データより、磁力計のオフセット・アライメントの温度変化・経年変化についての評価方法の開発、それに基づくデータ解析を実施した。 先に開発・試作を行ったハイブリッドICを用いて小型磁力計の試作を行った結果、1kgを下回るものが飛翔体搭載用として製作可能である事が確認された。省電力化・一層の小型化については、使用電圧・周辺部品の選択を含めて、さらなる検討が必要と考えられる。 試作したシステムを用いた地上校正試験で、感度・アライメントについて科学的要求を満たす精度の良い検定方法を確立する事が出来た。一方、今回の地上試験で確認された温度変化による影響は弱磁場計測では無視出来ない大きさである事も判明した。同じ事は、「あけぼの」「GEOTAIL」の磁場データを使った評価でも得られている。これらの衛星はスピン型姿勢安定方式であり、オフセット・アライメントの飛翔中データを用いた再評価を精度良く実施する事が可能である事が確認されたが、将来の3軸安定型の衛星、或いは、着陸船での観測では、実データを用いた評価そのものが困難と考えられる。感度・アライメント変動の軽減・飛翔時での評価方法については、今後の課題として残っている。 今回の研究では、自律制御部分、着陸船で使用が考えられる打ち出し機構については概念設計の議論のみとなっている。求めれる寿命・通信距離等により、磁力計以外の部分の規模は大きく変わりうる。科学目的と対応させた個々の条件でのシステムとしての規模を今後、具体的に検討していく事が必要である。
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