2年間に亘る研究によって、北西九州から中国西部にかけての広大な地域から第三系に多数のテフラが挟まれていることが判明した。その火山学的・堆積学的研究から供給源は、45〜20Maに対馬-五島列島西方沖合いに在ったと推定される火山前線上の火山に求められることが明らかとなった。九州本土に到達したテフラは、火砕流堆積物、マグマ水蒸気爆発にともなう火砕サージ堆積物、降下軽石・火山灰、火山性土石流堆積物、火山豆石などに分類される。火砕流に巻き込まれた炭化樹木の輝炭反射率の研究から、火砕流堆積物が九州本土に到達したときの温度は550℃以上であったと推定された。 一方、対馬の対州層群に挟まれる火山砕屑岩層の研究から、同層が水中火砕流堆積物であることが判明した。同層は軸流方向に(南西-北東)40km以上に亘って追跡され、その堆積は少なくとも40km^3以上であり、噴火当時は120km^3以上の巨大噴火であったことが明らかとなった。この水中火砕流の一部は九州本土にも達しており、唐津炭田の岸岳または竹有凝灰岩がその南方延長であると推定される。 今後も更に火砕堆積物の火山学的・堆積学的研究を続け、その年代を決定し、陸弧時代のアジア大陸東縁のテクトニクスと古環境の復元につとめる計画である。
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