報告者は酸化還元能力をもつ交差共役パイ電子系を組み込んだオリゴマーやポリマーの性質に興味をもち、そのモデル化合物としてオリゴペンタフルベン1を考え、その基本物性を明らかにすることによって、新たな機能性物質開発のための指針を得ることを目的に研究を行なっている。 本年度、報告者は 1、既に報告してある新しいペンタフルベン類合成法を用い、オリゴフルベン類2、3、4の四量体までの合成や分岐型オリゴマー5の合成を達成した。これらはいずれも比較的安定な化合物であった。 2、オリゴマー2のアルカリ金属還元を行ない、その還元体がジアニオン6を基本ユニットとした繰り返し構造をとることを明らかにした。 3、オリゴマー3および5の還元およびそのスピン状態のESRによる解析をおこなった。3(n=2)については三重項ジラジカルを観測しそれが基底状態であることを確認したが、しかし現在までのところそれ以外の系では多重項ポリラジカル生成を確認するまでには至っていない。 4、現在ペンタフルベンよりも酸化還元能力が高く生成するイオン種の安定性に優れたキノイド型パイ電子系を組み込んだオリゴマー7の合成を検討している。
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