著者は、酸化還元能力を持つ交差共役系を組み込んだオリゴマーやポリマーの性質に興味をもち、そのモデル分子としてペンタフルベンの6位を芳香環でつないだオリゴアリールフルベン類と特異な構造を持つオリゴアリールアセチレン類の研究を行った。これら化合物の基本物性を明かにすることによって、新たな機能性ポリマー開発の指針を得ることを目的とした。 1.オリゴアリールフルベン類の研究 ベンゼンのメタ位でつないだオリゴ(メターフェニレン)ペンタフルベン類の二量体〜四量体、および分岐型オリゴマーとしての1、3、5-トリフェニルフルベニルベンゼンのアルカリ金属還元を検討し、多重項ポリアニオンラジカル種の生成を試みた。その結果、二量体において還元体であるジアニオンラジカルが基底三重項種分子であることをみいだしたが、他のオリゴフルベン類については多重項種の生成を示唆する明確な証拠は現在までのところ得られていない。 2.特異な構造をもつオリゴアリールフルベン類の研究 著者は研究計画書に記載したキノイド構造をもつオリゴマーの合成を検討する過程において、著者らの考えた、マクマリ-反応を利用した多環状シクロファンポリエン類の合成法が歪みのかかったアセチレン結合をもつ環状アリールアセチレン合成に有用であることを見いだした。この方法により、これまで未知であった〔2._4〕メタシクロファンテトラインや、環状オリゴフェニルアセチレン類などを合成した。特に後者は、円筒状の共役系をもつ分子として初めての例であり、今後さらに詳細に検討してゆく予定である。
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