本研究の目的は、(1)タバコ染色体末端域DNAの特徴を明らかにするとともに、この知見を基に、傷害染色体へのテロメア配列付加についての遺伝学上の謎を解明する糸口を見つけるため、(2)末端域DNAの知見を基にして染色体維持と流動化を保証する仮説を設け実証することにあった。 (1)タバコ染色体末端域DNAの特徴を明らかにするため、末端域DNAを小断片化して塩基配列を求め、次に末端域DNA配列のカタログ化を行った。相互の類似度に基ずきグループ化すると、テロメアタンデムリピート配列、テロメアリピートをパリンドローム先端に持つ45bpのRETSタンデムリピート配列、180bpのタンデムリピート配列(複数グループ)であった。予備的なin-situ実験は検討に値する結果を得られなかったものの、RETS配列をプローブとしたサザン解析の結果からRETS様配列がテロメア部位である高分子量制限酵素断片に多いが低分子断片域にもスメア-的に多数のラダーとしてシグナルがみられたことから、RETSは染色体内部にも多数散在していると推定された。(2)以上の結果は、REST等のテロメア類似配列が染色体内部に分散していて、傷害により染色体に二重鎖切断を受けたときにテロメア付加合成のシ-ド(母核)として働き新たな部位にテロメアを確立できるとする仮説を支持すると考えられた。 今後、末端域からクローニングした上記DNAがテロメア付加合成のシ-ド機能を代行しうるか実験的に検証したい。
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