真核生物が大きな適応性と多様性を獲得した背景には、ゲノムのDNA量の増大に伴う線状(染色体)化の寄与が大きい。線状ゲノムの維持にはテロメアとテロメア合成酵素(テロメアーゼ)による染色体の末端部の保護と合成修復が必要である。染色体DNAに二重鎖切断が起ってテロメア部分が消失すると、通常はDNAがこの切断部位から分解して行くことになるが、テロメアが途中で生成されて安定化する可能性もある。本年度は、昨年度の成果をもとに1)テロメア型パリンドロームRETS(Restriction enzymes-resistant high molecular weight telomeric DNA(180bp)を手掛かりとして、タバコ染色体末端域DNAの構造の特徴を解析した。その結果、タバコDNA末端DNAには、テロメアタンデムレピ-ト配列、RETSタンデムレピ-ト配列、180bpタンデムレピ-ト複数配列から構成されていることを明らかにした。また、サザン解析の結果、RETSは染色体内部にも多数散在している証拠が得られた。以上の結果は、RETS等の末端類似配列が染色体内部にも散在していて、障害等により染色体二重切断が生じるとテロメアをその部位で新たに構築してDNAエンドヌクレア-セ等から染色体を守るという機構を支持しているものと考えられる。この機構は染色体維持と多様化機構の解明にも重要な手掛かりを与えくれる。2)酵母人工染色体YACのテロメア間にoriTを挿入して接合伝達性を付与し、YACテロメア-の生物界間接合伝達による構造変化を調べた。その結果、接合伝達される際、oriTでニックが入り一本鎖が伝達されるが、直に相補鎖が合成されニックも閉じられて完全な二本鎖DNAプラスミドとなることを示している。これはニック部分の5′末端が蛋白質等でブロックされていてテロメアが直接機能しない構造になっていることを示している。現在、oriTに連続してRETSをつないだ伝達性YACを構築し同様な実験行っている最中である。
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