ヤマトシジミとナミアメンボの予備的な観察とキオビベッコウの野外観察を行った。 ヤマトシジミは兵庫県三田市にある県立人と自然の博物館の周辺で、「1個体追跡法」による観察を行った。予め博物館内で飼育した羽化個体の翅にペイトマーカーでマークをし、博物館近隣の路傍に放して、観察した。同種個体との遭遇はかなり頻繁に行われたが、他種との遭遇はごくまれであった。その理由は、1)他種との生活空間の違い、2)他種との意識的な避け合い、3)他種から発せられる情報の無視が考えられるが、ヤマトシジミの行動域が人間の生活空間に隣接していることを考えると、第一の理由が推測される。休息している個体は、人間が50cmに近づいても飛び立つことはない。また、人間や敵に追われたとき、突然不動状態となる「フリージング」は、体が小さいだけに効果的である。 当初予定していたオサムシモドキとオオハサミムシの観察は、個体数が予想よりかなり少なかったため、水面(二次元空間)を利用するナミアメンボの観察に変更した。初年度は、100×80cm^2の実験用水面に個体識別したナミアメンボを密度を変えて導入し、各個体の動きをビデオで連続撮影して、個体間の距離および遭遇頻度を調べた。また、餌(アリ類)を投与して、餌への反応距離を測定した。 キオビベッコウの観察は京都府久美浜町の調査地で行った。営巣過程における個体追跡の結果、高頻度で種内寄生が生じていること、また種内寄生時に同種個体間の遭遇頻度が高まり、激しい争いが生じることなどが判明した。この成果の一部は第13回日本動物行動学会全国大会で発表した。
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