本研究の主な目的であるネナシカズラの寄生根誘導機構の解析は、ガラスプレート法やアクリルケースと医療用サージカルテープを用いる実験方法の開発により、目標を達成することができた。即ち、ネナシカズラの寄生誘導は、これまでに知られているような宿主からの化学物質によって作動するものでなく、光(近赤外光)によって作動するものであること。寄生根の誘導は、近赤外光と接触刺激によって引き起こされること。作用スペクトルの解析から、寄生根誘導に関わる光受容体が、フィトクロームであることが明確になった。以上の実験により、フィトクロームが寄生植物における寄生の制御に重要な役割を果たしていることを、始めて明らかにすることができた。さらに、近赤外光によって寄生誘導を作動させるためには、あらかじめ6時間以上の可視光をネナシカズラに照射しておく必要があり、その光質に関しては、青色光が効果的であることも分かった。しかし、赤色光でもある程度効果があり、かなり強い光が必要なことから、光合成の関与も否定できず、現在研究を継続している。 寄生根で新たに誘導されてくるタンパクに関する研究では、電気泳動により数種の候補が見い出され、現在単離を試みている。 寄生根の産生する有用物質に関する研究では、ペクチンメチルエステラーゼ活性が、寄生根誘導にともなって上昇することを見い出したが、ペクチン質の分解に関係する他の酵素の検出には至っていない。また、宿主組織との親和性を高める物質の検索には、まだ成功していない。
|