研究概要 |
寄生バチ・カリヤコマユバチによって寄生されたアワヨトウ蛾幼虫血清中には、細胞性免疫抑制蛋白質(immunosuppressive protein,ISP)が増加する。ISPは、ホスト幼虫の血球の異物攻撃(主に異物に付着し周囲を取り囲む包囲化作用)能力を低下させ、ホスト体内での寄生バチの卵及び幼虫の生存を助ける働きをするものと考えられる。本研究によって、先ず、このISPを主に高速液体クロマトグラフィーを用いて精製し、ペプチドマッピングを行った。全部でアミノ末端を含む76残基(全体の約1割)のアミノ酸配列を決定し、この情報を基にPCR用のプライマーを合成した。テンプレートには、寄生されたアワヨトウ蛾幼虫から抽出したmRNAを元に合成したcDNAを用いた。この結果、増殖した約900bpのDNAにISPのアミノ酸配列を読むことができた。次に、この900bpDNAをプローブにcDNAライブラリーからISPのcDNAのスクリーニングを行った。現在、4つの陽性クローンが得られ、この内、最も長いインサートDNAを含むクローンについて集中的に解析を進めている。先ず、インサートDNAの全長は、1.6Kbpであり、酵素EcoRIによって4つのフラグメントに切断される。これら4種DNAフラグメントは、各々サブクローニングし、4種フラグメントDNAの塩基配列を決定しようとしている。 先に、触れたcDNAスクリーニングのプローブとして使った900bpDNAを用いてノーザンハイブリダイゼイションを行った結果、寄生後約10時間以後には、アワヨトウ蛾幼虫体内に、ISPのmRNAが明らかに増加することが分かった。現在、寄生バチの共生ウィルス・ポリドゥナウィルスの感染によっても、ISPのmRNAが増加するものかどうか解析を進めている。
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