今回、新たに、これまでまったく注目していなかったゾウリムシから繊毛を分離し繊毛軸糸を調製する過程で得られる脱繊毛処理液(ジブカイン分画)中に大量のアルギニンキナーゼ活性が含まれることを見い出した。そこで、このジブカイン分画からのアルギニンキナーゼ精製を試みた。精製は、陰イオン交換カラム、ハイドロキシアパタイトカラム、ゲル濾過を用いて行なった。また、細胞体、膜マトリクス分画をジブカイン分画から精製したフラクションとともにSDS-PAGEしバンドを比較した。その結果、細胞体とジブカイン分画に含まれるアネギニンキナーゼは同じ分子量(46kDa)であったが、膜マトリクスに含まれるアルギニンキナーゼの分子量は前者と異なり、若干小さい(42kDa)ことが明らかとなった。このことは、エネルギーを生産する側の細胞体型のアルギニンキナーゼと、エネルギーを消費する側の繊毛型のアルギニンキナーゼが異なるアイソフォームであることを示しており、細胞体から繊毛へアルギニンリン酸により高エネルギーリン酸を運ぶアルギニンシャトル機構の存在を生化学的な構成要素の違いから確認できた。ロブスター筋肉のアルギニンキナーゼ(SDS-PAGEでは39kDa付近)に対する抗体によるイムノブロットを試みたが、クロスリアクションは見られなかった。原生動物のアルギニンキナーゼと後生動物のアルギニンキナーゼはタンパクの構造がかなり異なるかもしれない。
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