研究概要 |
本年度の研究では、昨年度葉緑体核様体の単離に成功したPinnularia nobilisの細胞の超薄切片による透過型電子顕微鏡観察をおこなった。この結果、葉緑体核様体の部位はチラコイド層の断続する部位に認められた。これは一昨年度に観察を行ったPinnularia viridiformisおよびPinnularia majorと同様のものであった。 DAPI染色により観察された葉緑体核様体の配置はPinnularia属では計21種となり、それらを3つのグループに分けることができた。すなわち、(1)核様体がリング型をなすもの:P.bogotensis,P.brauniana,P.divergens var.divergens,P.hertleyana,P.macilenta,P.mesolepta,P.microstauron,P.rupestris,P.schoenfelderi,P.subgibba,P.transvelsa、(2)リング型と分散型を同時にもつもの:P.divergens bar.bacillaris,P.divergens var.elliptica,P.gentilis,P.major,P.nobilis,P.sundaensis、(3)分散型のみをもつもの:P.viridiformisとなった。このうち、(2)と(3)に含まれる種は全て、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡による被殻構造の観察からPinnularia sect.Pinnulariaとsect.Divergentissimaと分類されるものであることがわかった。 また、Nitzschia sigmoideaの細胞においても透過型電子顕微鏡観察をおこなった結果、本種における2本の平行線状に配列する葉緑体核様体の内側は、薄いレンズ型のピレノイド構造をしていることがわかった。テクノビット包埋した細胞切片にキュウリのRubisco抗体を反応させ、FITC二次抗体で検知したところ、ピレノイド構造に特異的な蛍光が認められた。次ぎに、EuglenaおよびChlamydomonasのRubisco抗体を反応させた免疫電顕法では、Rubiscoを検知できなかった。しかし、キュウリのRubisco抗体を用いて、同観察を行ったところ、ピレノイドの切片部位に免疫金の粒子が特異的に見られた。
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