研究概要 |
本研究は、半磁性半導体であるCd_<1-x>Mn_xTeの超格子を用いた導波路型光機能素子を開発するための基礎研究として、クラスタイオンビーム(ICB)法によりCd_<1-x>Mn_xTeエピタキシャル薄膜を成長させ、その電子構造を調べるとともに、その光学特性,磁気光学特性,電気的特性について研究を行った。 1.X線光電子分光分析(XPS)の測定結果より、Cd_<1-x>Mn_xTeのスピン交換相互作用は、全Mn組成領域で、組成によらず一定であり,これらの結果と光吸収スペクトルの結果などから、Mn組成の大きな領域では、さらに高次の摂動を加えたバンド計算によりゼーマン分裂を求める必要があることがわかった。 2.x=1のMnTe薄膜の光導電スペクトルにおいて,本来,局在的で,光導電に寄与しないと考えられるMn^<2+>イオンの3d多重項間の吸収に対する光エネルギーで光電流が流れた。これは,電子配置間相互作用モデルによると,Mn3d多重項の基底状態から光励起されると,Mnの3d軌道と価電子帯を形成しているTeの4_P軌道との間の強いp-d混成のため,その軌道間に電荷移動が生じ,その結果,価電子帯に正孔が生成して,光電流が流れるものと考えられる。この結果から,伝導電子とMnの3d電子との相互作用が大きく,光機能素子に応用する上で良好な性質をもっていることがわかった。 3.ICB法により,Cd_<1-x>Mn_xTeエピタキシャル薄膜のInド-ピングを試みた。Inをクラスタイオンビームにして,そのイオン化率を高めると抵抗が減少し,良好にド-ピングができることがわかった。また,In量を増やしていくと,単調に抵抗が減少したが,ある程度以上にInをドープすると,結晶性が悪化して,逆に抵抗が増加した。しかし,抵抗率が10^4Ω・cmと,まだかなり高く,今後ド-ピング材料も含めて,最適ド-ピング条件を研究する必要があることがわかった。
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