研究概要 |
ポリプロピレンを母材とし,ガラス繊維を強化材とするFRTPの静的および疲労強度特性に及ぼす繊維長/母材との界面特性の影響を検討した.はじめに,射出成形により製作された平均繊維長の異なる試験片を用いて,静的/疲労試験を行った.衝撃強さと同様,平均繊維長が長くなれば静的強度も明らかに増すが,疲労強度,特に高サイクル疲労特性の顕著な改善は認められなかった.これは,一つには,試験片を射出成形により製作しているため,長い平均繊維長を有する試験片が得られなかったためであると考えられる.また,繊維と母材との界面強度が低く,繊維端末で生じたはく離が容易に繊維に沿って成長するため,少々繊維が長くなっても長寿命域での疲労特性の著しい改善が生じなかったことも考えられる.そこで,今後,長繊維ペレッfと射出・プレス併用成形により繊維長が6mm以上の試験片を製作し,疲労強度に対する臨界繊維長を明らかにする.次いで,界面特性の観点から,スタン'ブルシーfを用いたFRTPの静的,疲労特性に及ぼす水環境の影響を明らかにした.一般に,FRTPではガラス繊維と母材間の化学的な結合が弱く,界面に水が浸透しやすい.本研究の結果,母材はほとんど吸水しないが,ガラス繊維と複合化することにより,FRTPは見かけ上,大きく吸水することがわかった.この吸水により,静的強度および疲労強度は20%程度低下する.強度と吸水の間に相関がある.また,海水環境下では一般水より吸水が少なく,海水がFRTPの強度特性に水以上に大きな強度劣化をもたらすことはない.最後に,母材との接着性を高めるため,強化材であるガラス繊維のプラズマによる表面処理の有効性を検討した.その結果,プラズマ処理に用いる稀薄ガスの種類,ガス圧,プラズマを発生させるための電極電圧等により,複合材料の静的強度を最も高める条件が存在することがわかった.今後は,強化繊維だけではなく,母材に対するプラズマ表面処理法を開発,適用する.
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